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損保ジャパンのBMへのDRS
自動車保険業界において、ビックモーターと損保ジャパンの関与が焦点になっている不正請求問題は、保険業界にとって大きな挑戦でした。た。
損保ジャパンがビックモーターに対して特別扱いを行っていたことが痛烈で、業界全体に衝撃を与えました。
さらに、BM社への入庫推奨や保険金査定の適正性に関する念も持たれました。
この入庫推奨はDRSと呼ばれ、何台入庫させたかは査定社員の人事考課に大きな影響を与えていました。
損保ジャパンがこの問題にどれだけ関与していたのかは今も議論の対象です。
一部社員からの内部告発や、監督庁の直接の調査によって今後明らかになるだろうと思われます。
これからの保険業界は透明性と適正なプロセスの確立に向けて努力を続けることが重要です。
とりあえずは、保険業界全体が顧客獲得のために、透明性の向上に注目することにするべきです。
現役社員からの告発
AERA dotに現役社員の告発記事が掲載されていました。
簡易査定の基準が曖昧
損保ジャパンは8月31日、中古車販売大手ビッグモーター(BM社)による自動車保険の不正請求について、金融庁に調査報告を行った。BM社の不正を認識していながら積極的に加担した「もたれ合い」があったのかに注目が集まるなか、AERA dot.に損保ジャパン現役社員から内部告発があった。保険金査定の現場で渦巻いていた、生々しい“BM社びいき”の実態とは。 「会社は、とにかくBM社を推しまくっていました」 そう断言するのは、約10年前から、損保ジャパンで保険金査定業務を担当している現役社員のAさん。まさに、今回のBM社騒動の渦中にいる部署におり、実際の保険金査定の方法や現場の実態を知る社員だ。
保険金査定とは、自動車修理工場から送られてくる、事故車の破損状況や修理費用の見積もりを確認し、適正な保険金額を判断する業務のこと。
損保ジャパンは以前より、BM社をはじめ「取引件数や信頼性が一定の基準を満たす」と認定した企業については、業務効率化のため、事故車現物を見ずに写真だけで判断できる「簡易査定」という方法をとってきた。
しかしAさんは、「BM社案件は特殊な運用で処理されていた」と証言する。保険金査定業務は、事案を受けた各都道府県の担当者が行うのが原則にもかかわらず、BM社案件については一括して東京本社に回し、本社のBM社専任担当者が査定をしていたという。
簡易査定ですが、選ばれた優秀な工場(ディーラーなど)が適用され、見積もりと写真のみでほぼノースルーで損害額が確定します。
この「優秀な」という点は取引多い重要な工場という意味合いが強く、ディーラーなどはレバーレートと呼ばれる手数料も高く部品代も高いので立ち会いにすべきところ、営業の立場的にディーラーの方が強いので簡易査定にせざるを得ないところがあります。
BM専用のチームはない
損保ジャパン広報部に、BM社案件の査定金額について見解を求めると、「平均的なお支払金額として、他の整備・板金事業者と比較して高いということはありません」と回答があった。
しかしAさんは、「他社の倍とは言わずとも、1.5倍くらい高いのは当たり前。たとえばプリウスのリアバンパーを交換する場合、一般的には10万円以下で済むにも関わらず、BM社の場合はたいてい12、13万円ほどはかかっていました」と、きっぱり。
事故の際、通常バンパー交換になるが、同じ修理でこれほど差額が出るわけがない。
「だから、BM社の保険金過大請求疑惑が持ち上がって、昨年6月に社内で自主調査することになったときは、現場としては『今さらかよ』っていう感じでした。同業他社が調査をはじめるから、ウチも流れに乗らざるを得なかったんでしょうね」
元々、損保ジャパン社では大きな契約のある企業には専用の統括する部署があり、それが全国組織なら本社、地方ならその土地の部署ということになっている。
それを今更、担当者が他のところの事案をすることがあるので専属ではないとは詭弁にもならない。
民事ではほとんどの企業の社員は嘘をつくし当たり前だと思っている。
早急に刑事事件にして嘘をつけば偽証罪になることをわからせた上で質問をした方がいいと思う。
BM、グットスピードを推奨
BM社を優遇する運用は、保険金査定に限った話ではない。
Aさんの部署では、事故を起こした顧客に車の修理工場を紹介する「入庫紹介業務」も行っており、そこでも、あからさまな“BM社推し”の実態があったという。
これを損保ジャパンではDRS(現在は不明だが)と呼び、何件紹介したかが社員の人事評価になる。
そのため、真っ当な勉強をした社員は冷遇される風潮にある。
「入庫件数が少ないBM社工場があると、営業部門から『ちょっと面倒だけど頼む』って依頼が来て、わざわざ隣の県のお客さまにその工場を紹介することもありました。さすがに、車の引き取りはお客さまの代わりにBM社が行ってましたけど」 BM社への入庫件数を無理やり増やそうとするのは、自賠責保険の契約という“にんじん”をぶらさげられていたからだ。
BM社は、入庫件数に応じて各損保会社に自賠責契約を割り当ており、契約獲得をめぐって損保同士で激しい競争が繰り広げられていた。
これはBM社だけに限らず、地方のガメツイ修理工場の場合も同様である。
損保ジャパンの営業としては当然でも、お客様にとってはそんな会社を紹介されるのだからいい迷惑だ。
損保ジャパンはノーコメント
実はAさん自身、これまで特に問題だとは思っておらず、今回、国が動くほどの大問題に発展したことにショックを受けたそうだ。
「入社当時から“BMびいき”だったので、『あ、こういうもんなんだ』と受け入れていました。部署内にも『会社がよしとしているならいいか』っていう雰囲気があって、サラリーマンとして空気を読んでいたというか。完全に思考停止ですよね。風通しが悪い職場ではないけど、これだけの巨大組織なので、『自分一人が声を上げたところで……』と思う人もいたかもしれません」
とは言え、昨年の7月下旬には、「待った」の声を上げる社員もいた。
前述のとおり、昨年6月からBM社の不正請求疑惑についての自主調査を行っていた部署の担当者が、役員室に、「調査の結果、現時点で取引再開はできない」と報告に行ったのだという。
しかし、その数日後、損保ジャパンはBM社への入庫紹介を再開した。
同社広報部に本件を把握しているか確認したところ、「入庫紹介の停止、再開、再停止に関する経営判断は社外調査委員会による調査事項のため、回答を差し控える」と、ノーコメントだった。
嘘をついても成績を上げれば昇進する企業風土
Aさんは、「役員まで話が通っていたなら、最終判断は白川(儀一)社長が下したはず」と話す。
Aさんが話す「担当者の報告」と同じ時期の昨年7月には役員会議が開かれており、その際に「社長自らが不正の可能性を認識しながら取引再開を促す発言をしていた」という報道も出ている。
「白川社長は、親しみやすいし、社内の評判は悪くないんですよ。でもこれだけの騒動になっている以上、会社のトップとして無傷では終われませんよね。実際、BM社の不正請求によって車の修理費が高くなった結果、本来自腹で払える範囲だったのに保険を使い、翌年の保険料が上がるという経済的被害を被ったお客様もいるわけですし。8月中旬に社内向けの衛星放送で緊急の社長メッセージが流れたとき、私の部署では『退任するのか?』って勝手に予想していたんですけど、ところがどっこい、『社員全員で力を合わせましょう』みたいな話で。みんなけっこう引いてましたね」 9月1日朝の社内向けの衛星放送では、「既に報道されている、昨年7月の役員会議での社長の発言は事実」と認める発表があったが、社長本人からの言葉はなく、「フロア内全員しらけている」(Aさん)という。
社長が退任しない背景には、損保ジャパンはあくまでBM社にだまされた被害者、というスタンスがあるのかもしれない。
同社広報部に一連のAさんの証言について事実確認すると、こう回答があった。
「現時点では、BM社への保険金査定や入庫紹介業務の運用に問題があったとは結論付けていない。BM社の水増しを見抜けていたのに放置していたのでは?という点は、まだ疑義の段階です」
この回答をAさんに伝えると、「もし本当にBM社の水増しに気づいていなかったとしたら、逆に会社としてヤバいと思いますよ」とあきれ果てた様子だった。
「保険金査定に携わる全社員に、『今までBM社への対応に違和感があった人はいますか?』というアンケートをとったら、ほぼ100%『ある』と答えるはず。
でも、本社からはいまだにそういう調査は下りてこないし、現場の声を聞かないで、何を金融庁に報告したのか。
今回、私は会社を陥れるためではなく、問題点をちゃんと正してもらいたいという思いから話をしましたが、金融庁への報告内容次第では、『本社はなに寝ぼけたこと言ってんだ』って、私みたいに告発する社員がゴロゴロ出てくると思います」 「まだ会社を見限りたくない」という、社員の切実な思いが届くことを願うばかりだ。
損保ジャパンが、BM、グットスピード、ディーラー、フリート契約で不正な保険金を支払った分を一般の契約者の保険料の値上げでカバーするというのはこの時代にマッチしているとは思えないし明らかに不幸である。
東京海上、三井住友もカルテルを行い社会のルールを逸脱している。
営業偏重という点では、損保ジャパンもBMもとてもよく似ており、相乗効果で営業成績も悪事もここまできたという印象である。